近視治療

近視とは

人間の目はリラックスして遠くを見る状態を正視といい、正視を基準にしてピントを調整しています。近視とは、基本的に遠くにあるものがぼやけて見えづらく、近くのものはよく見える眼の状態です。眼の構造としては、光を受け取る神経組織の網膜よりも手前で映像のピントが合うようになってしまうため、網膜に届くときには距離が合わずにぼやけた情報を受け取って脳が認識してしまいます。

正視の時の見え方 近視の時の見え方

仮性近視 ・ 軸性近視 ・ 屈折性近視 ・ 病的近視

こどもの視力の現状

近年では裸眼視力が1.0未満の子どもの割合が増えています。2020年の調査では高校生、中学生の6割近く、小学生でも3割以上が裸眼視力1.0未満という結果でした。近視について知ることで子どもの視力低下や大人の近視を防ぐことに役立ててください。

裸眼視力1.0未満の子どもの割合

近視の種類

遠くが見えにくくなる近視ですが近視には以下の4種類あります。

仮性近視

近くを見続けて一時的にピントが合わせにくくなっている状態です。毛様体筋という水晶体の厚みを調節する筋肉が緊張して凝ることで近くを見るときのピントのままになってしまいます。小学生で突然見えにくくなった時には、仮性近視の可能性があります。

一時的に見えにくくなったのか、本当に視力が下がったのかは見え方でわかるものではありません。オートレフケラトメーターという眼科にある検査機器と視力検査で調べることができます。オートレフケラトメーターでは近視・遠視・乱視などの度数を自動的に測定して眼の状態を数値で確認し、数値上は問題ないけれど見えにくい場合は仮性近視が考えられます。

遠距離時の正視の人の目の構造 遠距離時の仮性近視の人の目の構造

近くを見るときの状態のままになっていて遠く見えにくくなっている眼

軸性近視

近視の多くがこの軸性近視です。角膜から網膜までの長さ「眼軸」が伸びることで遠くを見るときにピントが合わなくなった状態です。眼軸が伸びるということは眼の奥行きが伸びるということです。遠くを見るときの焦点の位置は変わっていませんが、網膜の位置が後ろにずれていることで焦点が手前にある状態になるためぼやけて見えます。一度伸びすぎた眼軸は元に戻すことはできないと言われています。

遠距離時の軸性近視の人の目の構造

眼の奥行きが伸びて焦点が合わずに遠くが見えにくくなっている眼

屈折性近視

角膜のカーブが強かったり、水晶体の光を屈折させる力が強すぎる場合に近くが見えにくくなります。遠くを見てる時でも水晶体が厚いままになっているため、ピントが合わない状態です。

病的近視

強度近視で眼に負荷がかかり眼底(眼球の後ろ側の組織の総称)に異常がある場合、病的近視と呼ばれます。 強い近視の場合はその分眼軸が伸びて、正常な眼よりも網膜や他の組織が後方に引っ張られることで負荷がかかっています。眼球の後ろ側にある網膜も伸びて薄くなるため、さまざまな眼の病気になる可能性があります。

近視になる原因

角膜のカーブが強かったり、水晶体の光を屈折させる力が強すぎる場合に近くが見えにくくなります。遠くを見てる時でも水晶体が厚いままになっているため、ピントが合わない状態です。

遺伝的要因

アジア人は近視が多く、両親のうちどちらかが近視の場合は2倍、両親とも近視の場合は5倍の確率で子どもが近視になりやすいといわれています。しかし、現代では明らかに近視の子どもが増加しているため、環境要因も関わっていると考えられています。

遺伝的要因 イメージイラスト
環境要因

スマートフォンやゲームなどの長時間使用で近くを見る時間が長くなることや、姿勢が悪いなどが理由です。外で遊ぶ機会が減っていることも原因だと言われています。また、成長期の場合は身長が伸びると同時に眼球も大きくなるため、眼軸が伸びて近視になりやすいという説もあります。

環境要因 イメージイラスト

近視が進行する仕組み

多くの近視は角膜から網膜までの長さ「眼軸」が伸びることや角膜・水晶体の屈折力が強いことが原因です。近視の中で特に多い「軸性近視」の仕組みを確認しましょう。軸性近視の原因にはいくつかありますが、「調整ラグ理論」が有力な説の一つです。

レンズの仕組み
遠距離時のレンズの仕組み 近距離時のレンズの仕組み

もしも水晶体の厚みが変わらない場合、近くのものを見るときは遠くを見るときに比べて焦点(光が集まる場所)が遠くなります。実際は水晶体の厚みを調節することで焦点の位置を変えることができるので、網膜の位置が同じでも光を集めて物をみることができます。

近距離時の水晶体の仕組み

人間の目はリラックスして遠くを見る状態を正視といい、正視(遠くを見る状態)を基準にしてピントを調整しています。近くを見るときは正視の状態より焦点が網膜より後ろに来ますが、水晶体の厚みを変えて焦点の位置を手前に移動させることでピントを合わせています。

近くを見るときは眼に力がかかって焦点を網膜に近づけている

近視になる仕組み(調整ラグ理論)
近視になる仕組み(近距離時)

このように、近くを見るときは水晶体の厚みを調整して後ろにある焦点を手前の網膜に合わせようとしています。しかし、実は水晶体だけで100%合わせているわけではありません。近いほど眼に負担がかかるため調整が難しくなり、焦点を網膜の位置に合わせきることができません。そのため、焦点が網膜より後ろにある状態になります。眼はなんとか焦点を合わせようとして水晶体でピント調整できない誤差を眼の奥行きを伸ばすことで順応しようとしていると考えられています。

近視になる仕組み(遠距離時)

こうして眼の奥行きが長くなり網膜の位置が後ろにずれますが、眼の奥行きは一度変わると戻らないと言われています。そのため、遠くを見ようとした時にも眼の形は近くを見るときのままになっていて、焦点が手前になってしまい遠くが見えづらい近視になってしまします。

近くを見ようとして眼の奥行きを伸ばしている

近視の中では「軸性近視」が最も多く、下がった視力は戻りません。
近視になってからは近視の進行を抑制することが重要です。
近視進行抑制の治療や近視の予防についても学び、日ごろから意識することで眼の健康を守りましょう。